りぼんの読書ノート

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ベティ・ザ・キッド(秋田禎信)

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開拓時代のアメリカに酷似した世界で、「賞金稼ぎのキッド」として売り出し中のガンマンの正体は、少女ベティでした。父親殺しの汚名を着せられたベティは、真犯人のロングストライドを追って、町から町へと旅を続けているのです。

べティに同行するのは、彼女を助ける謎の男性ウィリアムと、彼女に救われた原住民シヤマニ族の少女フラニー。ここまでは「マカロニウェスタン」的な世界なのですが、一行の乗り物が戦車であり、それを作ったのが今は失われたシヤマニ族の技術というあたりから、物語世界の歪みが始まってきます。

本書は単なる「美少女ガンファイト物語」には終わっていないのですが、それが良かったかどうかは、また別問題。悪役ロングストライドが帯びていた使命や、彼を使っていた権力の暗部が求めていた「SF的秘密」と、本書のスタイルが合っていないように思えるのです。もっとも著者は、最終章が先にできていたと述べていますから、「過去との決別と贖罪」というサブテーマの選択が悪かったのか・・。

ともあれ、砂漠で遭難しながら正気を失って生還した「天国帰り」と呼ばれる存在が、大きな意味を持ってきます。それは、ベティの本名が「エリザベス・スタリーヘブン」ということと関係していたのですね。「砂漠にあると云われる楽園」とは何なのかは、最後まで読んでのお楽しみということで、とりあえずは「美少女ガンファイト物語」愛好者(?)向きの小説です。

2014/8