りぼんの読書ノート

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豆腐小僧双六道中おやすみ(京極夏彦)

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豆腐小僧双六道中ふりだしの続編にあたります。まずは、豆腐をイメージさせる正方形の装丁が嬉しいですね。

妖怪とは「人間の想念が拵えた非存在の概念にすぎない」はずなのに、豆腐小僧はなぜ消えないのか。それを疑問に思い続ける滑稽達磨と化け猫の三毛姉さんの一行は、、山伏の玄角と、天狗に弟子入りを希望する権太の2人組について甲州へと向かいます。もちろん人間には見えないままですが、概念どうしの会話はにぎやかなもの。

そのとき幕末の甲府では、倒幕を語りながら信玄の隠し金を狙う悪商人に悪坊主に悪旗本が悪巧みの真っ最中。玄角と権太は金儲けの匂いを感じて一味に近づきますが、そこに隠密や、憑き物落しの女性や、渡世人や、土佐の剣客などが絡んでドタバタ状態。

概念の世界はもっと大変です。相変わらず「妖怪総狸化計画」を企む狸たちや、天狗や、八咫烏や、ヘタレ隠密の恐怖心が次々とイメージする土着妖怪たちが入り乱れて、まさに百鬼夜行状態です。しかも概念たちは、普遍的な属性に加えて、彼らを想起する者の性格を併せ持つというのですから、もう大混乱。そんな中で、「消えない」はずの豆腐小僧が消えてしまいます。はたして作者は、どう決着をつけてどう説明するつもりなのか、心配になるほど。

もちろん想念からキャラクターとして進化した豆腐小僧のゆるさが、物語を不思議な大団円へと導いてくれます。江戸からはじまってまだ甲府へしか達していない「双六道中」ですが、それぞれの土地の土着妖怪を紹介するなどしながら、まだまだ続くのでしょうか。でも「時空を越えたメタフィクション」と言ってしまっては、身も蓋もないような・・。

2013/12