りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

有罪答弁(スコット・トゥロー)

イメージ 1

推定無罪から20年以上の時を経て著された無罪までの「キンドル郡4部作」から一線を画した感のある本書は、娯楽性の高いグリシャム的な法廷ミステリとなっています。

大手法律事務所に勤める、元警察官で現窓際弁護士のマック・マロイは、560万ドルの金とともに行方をくらました僚友バートの捜索を命じられます。マックがバートの家で発見したのは冷蔵庫の中の死体。これはただの横領事件ではなさそうですが、巨大な法律事務所のトップたちは何を隠しているのでしょうか。

マックを敵と狙う警官時代の元相棒ピッグアイから執拗に付け狙われる中でわかってきたのは、バートが姿を消したのは横領とは別の理由であり、むしろ彼は横領の責任を押し付けられたということ。しかし、本当に事務所ぐるみの不正な資金操作は存在したのでしょうか。トップ弁護士たちの思惑はマックの想像を遥かに超えていたのですが、マックのとった行動もまた意外なものだったのです。

「グリシャム的な娯楽性」と言いましたが、ここには「グリシャム的な善悪観」はありません。『ザ・ファーム』に登場する法律事務所のダークさと、後にトム・クルーズが演じた主人公のクリーンさは、ここでは逆転しているのです。

本書のタイトルである「有罪答弁」とは比喩的なものであり、著者の作品の多くがそうであるように、複雑な真実を顕わにすることを回避するために、単純な事実のみを材料にして司法決着を図るという意味が込められているのでしょう。情状酌量を求めるときを除いては一人の人物の生涯など、法廷では意味のないもの。しかし、本書の中で振り返られる「マックの人生」なくしては、マックの行為は理解できないのですから。

とはいえ文学性の高い「キンドル郡4部作」との比較においては、「中途半端感」が残るのも事実です。

2013/9再読