りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

PK(伊坂幸太郎)

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「PK」、「超人」、「密使」からなる三部作です。それぞれリンクしているようで、微妙なズレも含んでおり、あまり整合性にこだわらすに読んでかまわないのではないかと思います。未来には複数の選択肢があるのですし、「ひとつひとつの決断が世界を変えていく・・かもしれない」という著者のメッセージは伝わりますので。

「PK」
謎の男から意味不明の改稿を迫られた人気作家は、浮気相手から電話がかかってきた時にゴキブリが出て、妻が2階に逃げていたために事なきを得ます。作家の息子はやがて議員になり、マンションから落ちてきた子どもを救ったことから知名度を上げ、57歳にして大臣になっていました。幹事長から偽証を頼まれた大臣は秘書官に、W杯最終予選で小津選手が決めたPKにかかわる秘話を調査させるのですが・・。一方で、大臣が助けた子どもは超能力者になっていたようで・・。

「超人」
独身作家の家に警備会社の営業に訪れた本田と名乗る男は、自分が超能力者であると語り始めます。サッカーの結果通知メールに表示される名前の持ち主は、将来起こる殺人の犯人であり、事前に殺人犯を抹殺しているとうのです。しかも彼を子どもの頃に救った大臣が、10年後に1万人規模の殺人を犯すという予告を受け取ったというのですが・・。本田の能力は、「マイノリティ・レポート」のシビュラのようです。

「密使」
他人と握手をすることで、1人あたり6秒の時間を奪うことができるという能力に目覚めた三上は、握手を仕事とするキャラクター・ショーの仕事に就いたのですが、その超能力にはあまり使い道がなさそうです。しかし、未来の惨事を回避するためのオペレーションに三上の能力を使いたいという男が現れ、大勢の幸福のために犠牲になって欲しいとの依頼をするのです。未来を変えるための最初のドミノはゴキブリだというのですが・・。

未来が過去とリンクしている様子は、マグリッドのトリック・アートのようですが、この作家が得意とするところですね。結局未来の惨事を救ったのは、ゴキブリではなく、作家の改稿だったように思えるのですが、いかがでしょう。

2013/7