りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2013/6 マリッジ・プロット(ジェフリー・ユージェニデス)

1位は「結婚に至る経緯=マリッジ・プロット」をそのまま題名にした、ジェフリー・ユージェニデスさんの新作で文句なしに決まりです。

今月アップした作品は、5月の長い出張時に読んだ本が大半ですので、文庫本が多くなっています。キンドルにでもすれば便利なのでしょうが、読んでいるのは100%図書館本ですのでなかなかそうもいきません。
1.マリッジ・プロット(ジェフリー・ユージェニデス)
ミドルセックス』でピューリッツアー賞を獲得した寡作な著者の最新作は「ラブコメ」でした。でも侮ってはいけません。ヴィクトリア朝時代の英国作家もシェイクスピアトルストイも「ラブコメ」を書いているのですから。1980年代のアメリカを舞台にした三角関係の物語は、ヒロインが専攻する文学史と二重構造を形成しながら、既成価値観に縛られつつ既成秩序に挑戦していった、当時の若者たちの心象風景を描き出します。

2.地図になかった世界(エドワード・P・ジョーンズ)
南北戦争直前のヴァージニア州。黒人奴隷を所有する自由黒人の農園主ヘンリーの急逝によって、農園の運営にはきしみが生じはじめ、新たな農園主となった未亡人、黒人奴隷たち、さらには奴隷制や人種問題にさまざまな立場を取る白人たちの人生も影響を受けていきます。本書では終始「奴隷制」の問題が通奏低音として流れていますが、その上で繰り広げられる登場人物たちの豊穣な物語が楽しい作品です。

3.ブギウギ(坂東真砂子)
敗戦直前、日本近海で沈められたUボートの艦長が箱根で変死した事件の通訳として雇われたドイツ語学者の法城は、敗戦国にも戦勝国にもあった「暗部」を彷徨うことになります。それに引き換え、重要参考人となった旅館女中リツのたくましいこと。戦後の東京で職を転々としながらジャズ・シンガーへの夢に向かっているというのですから。

4.月は無慈悲な夜の女王(ロバート・A.ハインライン)
2076年7月4日、流刑地として開発され、地球への資源移送を義務とする月世界植民地が、独立を宣言して横暴な地球政府と戦う物語。SFですが、ベースとなっているのはアメリカ独立戦争です。ユーモアを解するようになって自意識に目覚めるコンピューターのマイクと、技師のマニーの「友情?」は最高。発表当時の独創性はもちろんですが、何度読んでも楽しめる作品です。


2013/6/30