りぼんの読書ノート

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殺戮のオデッセイ(ロバート・ラドラム)

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原題はボーン・スプレマシー。『暗殺者』=「ボーン・アイデンティティの続編です。映画は冒頭で恋人マリーを殺害されたボーンの復讐が情報機関内部に巣食う陰謀の暴露につながっていく物語ですが、こちらはもっと複雑。

1997年の香港返還の直前、アジアに現れたジェイソン・ボーンを騙る暗殺者を操っている者は誰で、いったい何をもくろんでいるのか。本名のデイビッド・ウェブとして平穏な生活をおくっているボーンを偽者と対峙させるために情報機関が仕組んだ罠は、妻マリーの誘拐でした。誘拐者をたどると偽者のボーンにたどりつくという仕掛けだったのですが、そう簡単にはいきません。

妻の誘拐への怒りから暗殺者としての本性を蘇らせたボーンの精神的平衡は崩れてしまいそうになりますし、一方で情報機関内部に潜んでいた裏切者がマリーの安全を脅かしていきます。そして物語は「暗殺者vs暗殺者」のクライマックスへ、さらには中国共産党幹部の意外な正体と陰謀へと進んでいくのですが・・。

感想は・・詰め込みすぎですね。著者が楽しんで書いたことは伝わってくるのですが・・。冷酷なアメリカ無任所大使ハビランドや、意外な男気を見せる国務省事務次官のマカリスター、巨体を誇るMI6の香港責任者の林、前作の役割とは一転してボーンの擁護者となったコンクリンなど、登場キャラが多彩なのはいいのですが、肝心の黒幕が「無慈悲な独裁者キャラ」という点も月並みだったかな。

これを読んであらためて映画の「ボーン・スプレマシー」が良く出来ていると思わされました、ただし原作ではマリーは殺害されていませんので、第3作『最後の暗殺者』=「ボーン・アルティメイタム」を読む際には注意しなくてはなりません。

2012/10