りぼんの読書ノート

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ボーン・レガシー(ロバート・ラドラム)

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本書の実際の著者はドラムエリック・ヴァン・ラストベーダーという人物であり、ラドラムは原案者となっていますが、傑作『暗殺者シリーズ』の続編ですので、ラドラムの名前で紹介しておきます。

映画の「ボーン3部作」はかなり手が加えられているので、そちらを意識しすぎると少々話が見えにくいかもしれませんが、CIAの人格操作を含む実験から解放されたジェイソン・ボーンは、デイヴィッド・ウェブという大学教授として、愛する妻マリーや子どもたちとともに平穏な暮らしを営んでいます。

そんなボーンを再びスパイの世界に引きずり戻したのは、ボーンが犯人と見なされるように仕組まれた殺人事件でした。殺されたのはボーンの盟友コンクリンであり、ボーン自身もカンと名乗る若い暗殺者に命を狙われてしまうのです。

首謀者は人道的救済会社代表の仮面をかぶったスパルコという人物であり、彼はコンクリンが隠した科学者の発明成果を悪用して恐るべき陰謀をたくらんでいるのですが、このあたりの展開は説得力に乏しいですね。いまどきテロを通じて世界制覇をもくろむ人物がいるとは思えませんので・・。

ただし、若き殺人者のカンの正体が、ボーンがカンボジア時代に失った息子ではないかというあたりから、「個人的事件」としての物語には迫力が増してきます。カンは本当にボーンの息子なのか、親子の絆は回復されるのかとの期待が読者を繋ぎとめてくれるんですね。映画の知識しかないと「ボーンのカンボジア時代」などは意味不明でしょうけど。

チェチェン人テロリストの恋人ジーナ、ブダペストのCIA協力者ヤーノシュの娘アナカという2人のしたたかな女性たちの存在も見逃せません。この時代、女性のほうが強いのかも・・です。

本書もまた「新たなボーン・シリーズ」として映画化されるとのことです。かなり映画を意識したような作品になっていますし、クライマックスは『暗殺者』の冒頭シーンを意識させる展開になっていますが、この小説自体に優れた点はあまり感じられません。ラドラムの名前で紹介したのは、間違いだったかなぁ。^^;

2012/9