りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

インフォメーショニスト(テイラー・スティーヴンス)

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インフォメーショニストとは、「発展途上国に入り込んで情報を集めて、企業が意思決定するために使えるものにする」という職業であり、この定義だけでいいなら実際にも存在していそうです。利権獲得や許認可のための仕組みやキーパーソンを知ることは重要ですし、おそらく一部の国では贈賄や非合法機関との接触なども必要なのでしょう。

しかし本書のヒロインであるヴァネッサ・マンローのように、スパイ映画の主人公並みに活躍するとなると、現実を超えてしまいますね。彼女は天性の美貌に加えて、言語能力や変装能力や殺傷能力を併せ持っているのですから。

マンローのもとに資産家バーバンクサイドの令嬢エミリーの捜索依頼が持ち込まれます。4年前に行方不明となったエミリーを探し出す手がかりはアフリカ西海岸中央部の赤道ギニアにあるようなのですが、そこはカルト宣教師の娘だったマンローが生まれ育った故郷であり、9年の間記憶から封印していた場所でした。かつての恋人フランクリンと再会し、依頼人から同行を義務付けられたブラッドフォードらと潜入操作を行っていく中で、彼女の忌まわしい過去も明らかになっていきます。

エミリーは生きているのか。秘密の行動計画が漏れてしまったのは裏切り行為のせいなのか。何のための裏切りなのか。危機が迫る中でマンローは依頼主の欺瞞にたどり着きますが、そこにはさらに深い陰謀が・・。

天才的能力と狂気を併せ持ったヒロインというと、『ミレニアム・シリーズ』のリスベットを思わせます。しかし、父親への復讐を果たして心の平安にたどりついたであろう(そう思いたいものです)リスベットと異なり、マンローの狂気の幕引きは難しそうです。ということは、続編もあるのでしょう。

2012/10