りぼんの読書ノート

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ミレニアム5 復讐の炎を吐く女(ダヴィド・ラーゲルクランツ)

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ミレニアム1が世界的ヒット作となる前に急折した原著者スティーグ・ラーソンの跡を継いで、ダヴィド・ラーゲルクランツが執筆を始めた新シリーズは、見事に成功しているようです。著者の第1作となったミレニアム4でリスベットのコードネーム「WASP」の理由が判明したことに続いて、彼女がドラゴンのタトゥーを背負っている理由も明らかにされるのです。

前作で人工知能の世界的権威バルデルの息子の命を救ったリスベットは、その時の行動が違法であるとされたことに反論もせず、2カ月の懲役刑を受けて女子刑務所に収監されています。そこで殺害されようとした美貌の女囚ファリアを救おうとして看守までも支配する女囚ベニートと対決したことは、一見本筋とは関係ないようですが、最後になって彼女の宿敵となった双子の妹カミラと関わっていることが示されます。もちろん原理主義者の犠牲になったファリアの物語自体が、原著者の主張を掬い取っていることは言うまでもありません。

一方でリスベットは、元後見人のバルムグレンとの面会を通して「レジストリー」なる組織の存在に気づき、雑誌「ミレニアム」のミカエルに調査を依頼。戦後のスウェーデンで起きていた国家規模のスキャンダルとは、いったいどのような事件だったのでしょう。そしてそれは、リスベットの子供時代の悲劇とどのように結びついていたのでしょう。現在の日本でも、旧優生保護法による強制不妊手術が20世紀の後半まで行われていたことがあらためて問題視されていますが、国家による個人の権利の剥奪など許されるものではありません。

本巻では宿敵カミラはほとんど登場しませんでしたが、終盤に発生した経済事象は前巻の事件と関わっていそうですね。3作契約の最終巻となる次作では、天才姉妹の直接対決を見ることができるのでしょうか。これまでのストーリーを忘れないうちに出版して欲しいものです。

2018/12