りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

オウン・ゴール(フィル・アンドリュース)

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イングランドのプレミア・リーグに所属するサッカー・チームを舞台にして起きた事件を巡る、「ハードボイルドもどきのミステリ」です。

主人公は30代で失業中、さらに妻との離婚手続き中のスティーブン・ストロング。いわば冴えない中年男なのですが、なんと憧れだった探偵稼業に足を踏み入れてしまうんですね。それというのも彼は、ハンフリー・ボガードの映画は全部見て、チャンドラーの小説は全部読んでいるほど、ハードボイルドに心酔しているからなんです。だから「ハードボイルドもどき」。^^

そんなスティーブンのところに、地元のサッカーチームのシティのスター選手が痴漢容疑でで訴えられた事件が持ち込まれます。原告の女性が彼と同級生だったというだけの理由でしたが、事件はこれだけでは済みませんでした。他の選手にも身に覚えのない暴行容疑やヤクの所持容疑が次々と降りかかり、チームは一気に存亡の危機を迎えてしまうんですね。さらに捜査を進めるスティーブンも正体不明の連中に脅かされ、殴られ、騙されて、ボロボロになってしまい、ついには殺人事件すら起きてしまうという難事件に発展。

一連の事件の裏にあったのは、現会長を追い落とそうとする陰謀だったのですが、それにサッカー場の移転問題が絡んで複雑化していたのです。こんな事件が新米探偵の手に負えるのでしょうか?

ミステリそのものや、主人公のハードボイルドもどきぶりよりも、イングランドのプレミア・リーグが「町のサッカーチーム」から「グローバル・ビジネス」へと変貌していった様子が楽しめました。本書が書かれた90年代は、本書の「シティ(架空チームです)」のように町に根ざしたチームは既に時代遅れになりつつある過渡期だったのですね。

2012/9