りぼんの読書ノート

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夜のサーカス(エリン・モーゲンスターン)

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1885年に天才プロデューサーのチャンドレッシュの企画によって生まれたサーカスは、元プリマバレリーナのセンスや、建築家の技術や、美人姉妹の審美眼を注ぎ込んだ豪奢で魅惑的なイベントとして話題を集めます。

黒と白のテント、風変わりなからくり時計、サーカス開業以来消えたことのない白い篝火。東洋の軽業師、カードに運命を読む占い師、自由自在のアクロバット、氷の庭、雲の迷路。しかし、世界各地の郊外に突如出現して夜だけ開催される「ル・シルク・デ・レーヴ」には、魔術的なものが潜んでいたのです。

それだけではありません。このサーカスこそが、宿命のライバルである2人の魔術師の弟子たちが長く苛酷な闘いを強いられる舞台だったのです。

ひとりはチャンドレッシュの秘書マルコ。もうひとりは奇術師シーリア。この闘いがどのように決着するのか知らされないままに奇術を競い続ける2人は、やがて互いに惹かれるようになっていくのですが・・。

魔術という捉えどころのない世界を題材としながら、キャラクターに存在感があり、読者を物語の内部に引き込んで、まるでサーカスの舞台を見ているような作品です。2人の闘いに決着がついてもサーカスの物語は続き、身近な場所に突然現われてくるような気分にさせられます。

2012/6