りぼんの読書ノート

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史記武帝紀7(北方謙三)

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シリーズ最終巻は、『三国志』や『水滸伝』、『楊令伝』と比較しても纏まりのいい、それでいて爽やかな余韻を遺したエンディングとなりました。

ようやく死を意識し始めた武帝・劉徹は、それまでの老醜から抜け出たかのように最後の輝きを放ちます。ただし、その輝きは最後の最後までそれとはわかりません。巫蠱の噂が流れた皇太子の反乱と自死匈奴に最後の決戦を挑ませた李広利の大敗、末子・弗陵の母である趙氏の殺害など、老醜の継続と思しき事件が続くのです。

それらが全て将来を見据えた布石であったことは、武帝に最後まで忠誠を尽くした桑弘洋の言動によって明らかにされます。武帝に「依頼」されて御史太夫となった桑弘洋が、大司馬大将軍の霍光と無意味な対立を繰り返す理由が明かされた時に全てがわかるのです。このあたり、ちょっと綺麗すぎますが・・。

漢との最後の戦いに匈奴の将軍として臨んだ李陵は、蘇武がひとり籠る北辺の地で厳しい大自然と対峙して自らの空虚を塞ごうとし、『史記』を書き上げた司馬遷は静かに燃え尽きようとし、頭屠は成長した息子へと次代を託すのです。

登場人物たちの退場が未来を感じさせる、見事な大団円と言えるでしょう。

2012/6