りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2012/5 悪い娘の悪戯(マリオ・バルガス=リョサ)

1.悪い娘の悪戯(マリオ・バルガス=リョサ)
ペルーの上流階級に育った少年リカルドが恋に落ちた少女は、とんでもない悪女でした。彼女は生涯に渡ってリカルドを翻弄し続けるのです。パリ、ロンドン、東京、マドリッドと、時代と世界を股にかけたS女とM男の倒錯的な恋愛は、どこに行き着くのか。天性の嘘つきで背徳者のニーニャ・マラ(悪い娘)の本心はどこにあったのか。ガルシア=マルケスの『コレラの時代の愛』と並ぶ、壮大な愛の物語です。

2.ロスト・シティ・レディオ(ダニエル・アラルコン)
内戦で多くの人の消息が失われた南米の国で、行方不明者に向かって呼びかけを続けるラジオ番組でパーソナリティを勤めるノラが、ある日受け取ったリストに見い出したのは、行方不明中の夫の名前でした。「他人の記憶という煉獄」にしか存在しなくなった不在者が他者に与え続ける影響の重みを感じる作品です。

3.ハゲタカ(真山仁)
「死に体」となった企業を買収・転売して利益を稼ぐ欧米流のドライなビジネスは、日本型経営にとって異質なものだったのでしょうか。大手の証券会社や銀行の倒産が相次いだ時期を舞台にした本書が突きつけるものは、「ハゲタカ・ファンド」ビジネスの異質さではなく、バブル期に奢り高ぶって腐敗し、リスク管理を忘れた日本という国のあり方の異質さなのです。



2012/5/30