りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2014/9 ディア・ライフ(アリス・マンロー)

アリス・マンローさんの「最後の著作」は、年齢を感じさせない力強い作品です。塩野七生さんの著作は「中世三部作」のラストですが、まだまだ絶筆ではありませんよね。

冲方丁さんが「最後のラノベ」とするという作品も面白かったですね。主人公が闘う少女たちであることが独特の世界観を築き上げているのですが、仮にそういう設定でなかったとしても、優れたSF・アクション・ミステリ作品です。姉妹編・続編もあるとのこと。
1.ディア・ライフ(アリス・マンロー)
83歳で引退を宣言したノーベル文学賞受賞作家の「最後の著作」です。短編小説の巧みな技法を用いて、大河小説のように人生を紡ぎあげることができる小説家です。とりわけ著者自身が「フィナーレ」と銘打った最後の4編は、両親への愛に溢れています。「でもわたしたちは許すのだ。いつだって許すのだ」と総括する最後の一文の、なんと重いこと。そしてなんと説得力のあること。

2.皇帝フリードリッヒ二世の生涯(塩野七生)
「ローマ以降」を描いた「中世3部作」の棹尾を飾るのは、ルネサンスを先取りしたかのような合理性の持ち主であったフリードリッヒ2世。いかにも著者好みの人物であり、「生ききった、と言える人間にとって、勝者も敗者も関係なくなる」という賛辞も贈られているほど。一方で、彼とことごとく対立したローマ法王サイドの不寛容さと不合理さが際立つのです。

3.バージェス家の出来事(エリザベス・ストラウト)
成功した弁護士である長兄ジムと、ダメ弟のボブの関係が、ボブの双子の妹スーザンの息子ザックが起こした事件をきっかけに変わっていきます。バージェス家の三兄弟に起こったドラマは、アメリカ社会における「家族の絆」の重要性を再認識させてくれるものです。ピューリッツアー賞を受賞したオリーヴ・キタリッジの生活に続く翻訳です。



2014/9/29