柔道草創期の加納治五郎と講道館四天王らの異種格闘技戦を迫真の描写で綴った夢枕獏さんの『東天の獅子』を読んで、四天王の中で最強と言われた西郷四郎をモデルとした本書を読んでみたくなりました。以前、映画では見たんですけどね。
第1巻「天の巻」は、理論に基づいた近代柔道を模索する矢野正五郎の紘道館に身を寄せた天才児・姿三四郎の修行時代と、柔道の第一人者となった三四郎が柔術家たちと繰り広げる死闘が描かれます。野試合をたしなめられた三四郎が池につかったまま一夜をすごして内省する場面は、映画でも有名。
警視庁武道大会で柔術家の村井半助を破った三四郎は、師の村井を超える実力を持ちながら、精神面での粗暴さゆえに武道大会の出場を禁じられた桧垣源之助に付け狙われます。やがて2人は右京が原で死闘を繰り広げることになるのですが・・。
物語の横軸となるのは、村井の娘・乙美が三四郎に寄せる純愛と、鹿鳴館からの帰り道に暴漢に襲われたところを三四郎に救われた子爵令嬢・高子の横恋慕です。また、明治の浪人を名乗る憂国の壮士・真崎東天の存在も、三四郎に影響を与えることになりそうです。真崎東天のモデルは宮崎滔天ですね。実像の西郷四郎は、講道館を辞めた後に宮崎とともに大陸運動に身を投じることになるのですから。
2012/6