りぼんの読書ノート

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姿三四郎 地の巻(富田常雄)

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柔術諸派との対戦に勝利した紘道館柔道が人気を博し、最強の柔道家として名声をあげた三四郎でしたが、闘いは終わりません。次なる相手はアメリカ人ボクサーや、兄・桧垣源次郎の敵討ちを目論む狂犬のような唐手家、桧垣鉄心と源三郎の兄弟でした。これはもう「異種格闘技戦」ですね。

ボクサーとの対戦を「見世物」として避けていた三四郎でしたが、父・村井半助を倒された怨みを越えて三四郎を慕う乙美を身売りから救うために、破門を覚悟してリングにのぼります。対戦の描写はまるで「猪木・アリ戦」であり、格闘に対する著者の深い造詣が感じられます。

この巻の三四郎は、「強者の悲しみ」から脱却できないままでいます。勝つほどに怨みを買い、仇敵を増やしていく三四郎を救うのは、乙美の純愛なのか。それとも東天の大陸運動なのでしょうか。悩みを抱えたまま桧垣兄弟が待つ峰の薬師に向かう三四郎でしたが・・。

著者自身、姿三四郎の続編など書くべきではなかったと述べていたようですが、確かに第2巻以降は長い蛇足のように思えます。

2012/6