最強の柔道家と謳われる三四郎の前に、最後の強敵が現れます。三四郎と同様の天分を持ち、最強の柔術家として九州から登場した津久井譲介には三四郎の必殺技・山嵐が通用しないのです。一方、これまで無心で勝利を得てきた三四郎でしたが、自分の勝敗に柔道の未来がかかっていることを意識しはじめたために、闘いに対する恐怖心を覚えるようになってしまったんですね。果たして津久井との対決は・・。
しかしその前に、これまで物語の横糸であった「女性関係」が前面に現れてきます。三四郎が倒した柔術師範の遺児・乙美の純愛。驕慢な子爵令嬢で、三四郎に袖にされた恨みを抱く高子。数奇な生い立ちの娘義太夫の花形。紘道館を破門されて車夫として暮らす三四郎に惹かれた、鳶の頭の勝気な娘。
津久井譲介との対決は、高子が巻き起こした嫉妬と敵意のせいで、尋常な対戦とはならなかったのですが、爽やかさを残して三四郎は旅立っていきます。「感動の名作、堂々完結」と言いたいところですが、やはり第2巻以降の展開は長い蛇足のように思えます。
2012/6