りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

解錠師(スティーヴ・ハミルトン)

イメージ 1

8歳の時に悲劇に巻き込まれたショックから言葉を話せなくなった青年マイケルには才能がありました。それは、絵を描くことと、どんな錠も開くことが出来る能力。鍵を開けるには、ピン位置が正しく合った手ごたえを敏感に感じ取る芸術的な感性が必要なんですね。

高校生になったマイケルは、悪友の悪ふざけに付き合わされて他人の家に入り込み、逮捕されてしまいます。軽い保護観察で済むはずでしたが、そこで運命の車が回ってしまうのでした。ひとつは、保護観察者の娘アメリアに恋をしてしまったこと。もうひとつは、破産した保護観察者によって犯罪者組織に売り渡されたこと。犯罪者組織がアメリアの生命を脅かす恐れがあったために、断れなかったのです。

物語は禁固刑に課せられているマイケルが、犯罪者組織によって解錠能力を鍛えられ、犯罪に手を染めていく18歳の夏の出来事と、一人前の解錠師として凄腕のプロたちと仕事をした結果、劇的な逮捕に至る翌年の出来事を交互に語る形式で進んでいきます。

マイケルはアメリアと再会を果たせるのか。今度出合った時に、彼女への愛は言葉となってあふれ出るのか。スピーディでドラマティックな展開のラストは、オープンエンディングとなっています。本書はクライム・アクションを本筋としながら、青年の自己回復の物語でもあるのです。

2012/3