りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

海に降る(朱野帰子)

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光合成に必要な太陽光が届かない、水深200m以上の海を「深海」と言うそうです。人類の手はほとんど届かず、「宇宙よりも遠い場所」なんですね。宇宙飛行士が世界で500人いるのに対し、深海パイロットはたったの40人だけで、うち日本人が20人といいますから、日本は「深海先進国」なのです。

本書は、女性初の有人潜水調査船パイロットを目指す天谷深雪の挫折と再生の物語。母と離婚後交流が途絶えたものの、父がかつて開発に携わった「しんかい6500」に乗り込むことを目標にしていた深雪でしたが、あるできごとから父を信じられなくなり、閉所恐怖症に陥ってしまいます。これは致命的だ。

そんな深雪が、深海の未確認巨大生物を追い求める高峰浩二と知り合い、信じるのは自分自身しかいないと気づいて、再び潜水調査に挑むのですが・・。

「特殊組織で活躍し、ロマンス気配もある若い男女」というと、有川浩さんの作風とかぶりますが、こちらのほうがロマコメ要素は少ないかな。

本書の設定は「震災以降」なんですね。作中で、独立行政法人である「海洋研究開発機構」の存在意義も問われていますが、未知の世界へのロマンと、海洋資源開発の足がかりと、地震カニズムの解明と、そのどれもが必要なことなのでしょう。最近は、宇宙航空研究開発機構JAXA」や、南極観測を行なう国立極地研究所のほうが有名になっていますしね。^^

2012/3