りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

月下の恋人(浅田次郎)

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浅田さんが得意とする「人情もの」が、いわゆる「奇譚」的な色彩を帯びて綴られます。

「情夜」全てを失った男に手紙を届けた謎の女性は、自己再生のための幻?
「告白」血の繋がらない娘と義父は、雪をきっかけに和解できるのでしょうか。
「適当なアルバイト」お化け屋敷での奇妙な体験はお化けよりも怖かった・・。

「風蕭蕭」仁侠映画の展開は、司馬遷の「荊軻伝」にそっくりなんですね。
「忘れじの宿」忘れられない思い出の痼りを消すという不思議なマッサージ。
「黒い森」素性を明かさない婚約者の秘密は、何なんでしょうか。

「回転扉」運命が変わる時に現われる不思議な紳士が、またこの瞬間にも。
「同じ棲」永い春を乗り越えたふたりが不思議な体験に遭遇するのですが・・。
「あなたに会いたい」一度は捨てた故郷で借りた車のナビが導いていく先は?

月下の恋人」死を覚悟した男女が海辺の宿で見たものは、2人の別の運命?
「冬の旅」「国境」を越える夜汽車で出会った男女は、若き日の両親の幻?

鉄道員(ぽっぽや)』や『天国までの百マイル』を髣髴とさせる物語群ですが、そこまでの水準には達していないように思えます。どの物語も、良く言えば「余韻を遺すエンディング」なのですが、中途半端な終り方をしているという印象が残ってしまいました。

2011/12