りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

やなりいなり(畠中恵)

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しゃばけシリーズ」の10作めは、独特の死生観や世界観を前面に出して少々重いテーマを扱った前2作から一転して、若だんなと妖怪たちの日常がほのぼのと描かれます。物語に登場する料理やお菓子のレシピが紹介されているのは、高田郁さんのみをつくし料理帖を思わせますが、鳴家などの妖怪に手伝わせ、同時につまみ食いに注意するのは大変そうです。^^

「こいしくて」
若だんなの一太郎が住む町に恋の病が大流行。結界を守る橋姫が失踪した為、普通ならば入って来れない神や妖怪が出入りしているのが原因のようです。しかも橋姫の失踪にも恋が絡んでいるらしいのですが・・。『ゆんでめて』で起こらなかったことにされた未来での、一太郎の恋人の名前も出てきます。

「やなりいなり」
一太郎の母親・おたえの守狐たちが作った「やなりいなり」を食べていたら、迷い幽霊が手を伸ばしてきました。なぜか長崎屋から離れようとしない幽霊は、何をしようとしていたのでしょうか。

「からかみなり」
一太郎の父親・長崎屋藤兵衛が3日も店に戻ってきません。どうやら藤兵衛は人でないものと関わっているようなのですが・・。妖たちに囲まれていながら、不思議な事に全く気づかない藤兵衛旦那のおとぼけキャラがいいですね。

「長崎屋のたまご」
逢魔が時に空から落ちてきた青色の玉は、空の一部が欠けたものでした。空に住む魔たちが玉を追って降りてくるのですが・・。鳴家たちが大騒ぎしながら玉を追いかけている様子が眼に浮かびます。^^

「あましょう」
幼馴染みの栄吉の奉公先へ菓子を買いに行った一太郎が、別のお客のケンカに巻き込まれてしまいます。五一が新八の妹との縁談を断ったことが発端になり、親友同士の大喧嘩が始まるのですが、五一が破断を申し入れた本当の理由は、新八と妹を思いやってのことだったのです。親友同士の不幸なすれ違いに、自分と栄吉を重ね合わせてしまう一太郎でした。

2011/11