りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

しゃばけ15 おおあたり(畠中恵)

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ひところは「生死観」に関わる重めのテーマを扱ったシリーズですが、この数作はまた軽くなりました。1年に1作という長期シリーズでは、避けられないことなのでしょうか。今回のテーマである「おおあたり」とは、良いことなのか、悪いことなのか、一太郎は考えてしまうのです。

「おおあたり」
一太郎の親友で菓子屋で修業中の栄吉は、餡子を作るのが大の苦手という致命的な欠陥を持っているのですが、オリジナルの辛あられを作ったところ、これが大当たり。ところが栄吉のアイデアを盗んだ偽物まで登場してしまいます。その背景には、栄吉の修行明けを待ちきれない許嫁の千夜も絡んでいるようで・・。大当たりは栄吉に幸福をもたらさなかったようです。

「長崎屋の怪談」
実体は夢を食べる妖の獏である噺家の場久が、暑気払いに語った怪談は大当たり。しかし怪談で語られた「追いかけられる男」と似たようなことが、一太郎の周辺でも起こり始めます。ふとしたことで辻斬りを見逃してしまった同心が、罪の上塗りをしてはいけません。

「はてはて」
貧乏神の金次が貰った富札が、まさかの百両以上の大当たり。しかし、2枚のはずの当選札が3枚出てきてしまっては問題です。大当たりにならなければ、富札偽造もバレなかったのですが・・。

「あいしょう」
時代は少々遡ります。大妖おぎんから、5歳になった孫の一太郎のお守り役を頼まれた仁吉と佐助でしたが、相棒の存在には少々不満のようです。しかし、少し目を話した隙に一太郎がいなくなってしまいます。子供のころから心優しかった一太郎は、攫われた子供を守ろうとしたのですね。事件を通じて信頼しあえた仁吉と佐助の相性は大当たりで、これはハッピーエンドでした。

「暁を覚えず」
病弱で長崎屋の跡継ぎの仕事ができないことを悩んでいる一太郎のもとに、猫又の薄墨が持ってきたのは、丸一日寝るかわりに次の一日は元気で過ごせるという丸薬でした。接待に外出する一太郎のおとも役を決めるため、妖たちは饅頭でくじ引きを始めるのですが・・。母のおたえも、兄の松太郎の嫁のお咲も、夫の嫉妬に気付かない天然ぶりが共通していますね。

2017/9