りぼんの読書ノート

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しゃばけ19 いちねんかん(畠中恵)

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このシリーズもこれで19作め。江戸で廻船問屋と薬種問屋を営む大店長崎屋のご主人夫婦が、はるばる九州の別府まで1年間の湯治にいくことになりました。これは病弱な若だんな・一太郎の跡取り修行ということなのでしょうか。店を託された一太郎は張り切るのですが・・。

 

「いちねんかん」

一太郎は携帯用の薬袋という新商品を売り出そうと考えます。もう若くはない大番頭は、その売り上げを隠居金に充ててもらおうと大乗り気。知り合いの町名主に相談するのですが。その手代は相当の食わせ者だったのです。一太郎損切り判断が見事でした。これは跡取り修行になったかも?

 

「ほうこうにん」

できるだけ店表に出るという一太郎に付き添わせるために、手代の仁吉と佐助は、貧乏神の金次と付喪神の屏風のぞきを奉公人として働かせることにしました。ところがそこに詐欺師が登場。貧乏神が苦手とする人物とは、どのような者なのでしょう。もちろん最後は一太郎の機転が妖たちの鬱憤を晴らしますが、どうも損ばかりしているようですね。

 

「おにきたる」

上方で病を流行らせた疫病神と疫鬼が江戸に登場。荼枳尼天の庭で取れた生薬に守られた一太郎はともかく、このままでは江戸が大変なことになってしまいます。知り合いの大国主命にお参りに行った一太郎は、そこで全ての禍を司るという大禍津日神に出会います。新型コロナ禍のもとで書かれた作品なのでしょう。パンデミックもこのように退散させられれば良いのですが、現実の疫病に神頼みは無力のようです。

 

「ともをえる」

上方で大きな商いをしている椿紀屋の江戸店に招かれた一太郎は、意外な頼み事をされてしまいます。流行病で長男を亡くした椿紀屋は娘に婿を迎えて跡取りにすることとして、その候補者の人選をして欲しいというのです。長崎屋の薬が効いたことからの縁ですね。一太郎はどのようにして候補者たちの人物を見極めるのでしょう。

 

「帰宅」

ようやく1年がたち両親の帰宅も近づきましたが、大店の旦那集の間では物騒な噂が出ていました。店の小僧たちに湯屋で接近してきた者たちが賊ではないかというのです。そして仁助や佐吉が不在の間に、長崎屋が襲撃されてしまいます。店にいたのは一太郎と非力な妖たちだけ。まさか鳴屋が戦えるとは思えませんが、大丈夫なのでしょうか。どうやら金次と屏風のぞきは、この後も奉公を続けることになりそうですが、そっちの方が危険かもしれませんね。

 

2021/7