りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

しゃばけ20 もういちど(畠中恵)

江戸の大店長崎屋のひとり息子で病弱な一太郎と妖たちの活躍を通して、生命の不思議さに迫るシリーズも本書で20作目。今回は一太郎の身に不思議な出来事が起こってしまいます。

 

「もういちど」

今年の夏の異常な暑さは、200年ぶりに起こった星の代替わりが原因のようです。あちこちで雨乞い祈祷が行われたせいで隅田川には龍神があふれかえっているとのこと。涼を求めて舟で根岸の別邸へ向かった一太郎の一行はお神酒で酔っぱらった龍神たちのせいで川に落ち、若い星にぶつかってしまいました。そのせいで赤ちゃんに戻ってしまった一太郎は、どうなってしまうのでしょう。

 

「おににころも」

どうやら赤子に戻ってしまった一太郎の成長は早く、気が付くと5歳児ほどに育っていました。このままいくと10カ月程度で元に戻れそうです。なぜか若返った一太郎は健康なのですが、優しさや推理力は失ってはいません。どうやら根岸近辺では女の子が行方不明になる事件が頻発しているようなのですが、薬草を取りにきた近所の子供に協力して家を出た一太郎が攫われてしまいました。

 

「ひめわこ」

12歳ほどに育った元気な一太郎は、両国の剣劇芝居に出ている浪人から剣術を学び始めます。しかしその浪人が道場破りに狙われたことで、巻き添えを食ってしまうのですが・・。道場破りの正体を見抜いておびき出した推理力や、自分以外の人に命のかかった決断を迫ることを恐れる優しさは変わっていませんね。でもあの一太郎が剣術とは!

 

「帰家」

だいたい元の姿に戻ってきた一太郎が久々に長崎屋に帰ってくると、幼馴染の菓子職人・栄吉に縁談が持ち上がっていました。めでたい話なのですが、早くも起こった夫婦喧嘩に巻き込まれた際に、超高価な蒼玉が入っている巾着袋が行方不明になってしまいます。どうやら栄吉の許嫁に隠された秘密と関係があるようなのですが・・。ともあれ栄吉の縁談はうまく進みそうで良かった。

 

「これからも」

今回は、妖たちの追跡からも逃げおおせた深編み笠の人物の謎に迫ります。どうやら天から村に落ちてきた龍の石と関りがあるようなのですが・・。一太郎の再成長は終わろうとしています。残念なのは元の姿に戻るに連れて、ふたたび病弱になってしまったこと。残念ですが、元気な子供時代を経験できたのは良かったのでしょう。

 

2023/11