りぼんの読書ノート

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風にのってきたメアリー・ポピンズ(P・L・トラヴァース)

ウォルト・ディズニーの約束」という映画を見たことがあります。トム・ハンクス演じるディズニーが、エマ・トンプソン演じるトラヴァースに『メリー・ポピンズ』の映画化を交渉する物語。厳しい条件をつけ、映画のアイデアにダメ出しを繰り返すトラヴァースは、ディズニーに問いかけます。「メリーがやって来たのは誰のためだと思っているのか?」と。正解は驚くべきことに、子供たちのためではなく、ダメ父親と子育てに苦しむ母親のためだというのです。このエピソードを念頭に置いて、原作を読んでみました。これまでディズニー版の映画しか知らなかったのです。

 

桜町17番地に住むバンクス一家は6人家族。ご主人、奥さん、長女ジェイン、長男マイケル、そして双子のジョンとバーバラ。子供の世話係を募集したところ、東風に乗ってやってきたのがメアリー・ポピンズ。そして彼女の周囲では、不思議な出来事が起こり続けるのです。歩道に描かれたチョーク絵の世界に入り込み、隣家の飼い犬と会話し、子供たちを笑うと浮いてしまうおじさんに紹介し、方位磁石を使って世界旅行に連れ出し、動物と会話させ、金色の紙で星まで作らせてしまうのです。そして西風ともに去ってしまうのですが・・。

 

1934年にイギリスで出版されてからずっと、子供たちや、子供の心を忘れないでいる大人たちに愛され続けているファンタジーです。最近では、ロンドンオリンピックの開会式に30人のメリー・ポピンズが登場してくれました。でもこの本だけ読んで、メリーが母親のためにやってきたと解釈するのは難しいですね。それを理解するには、トラヴァースの生い立ちを知る必要があるのです。

 

2023/11