りぼんの読書ノート

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二都物語(チャールズ・ディケンズ)

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フランス革命を背景に描かれる、フランスの亡命貴族チャールズと、ロンドンの酒びたりの弁護士シドニーの2人の青年と、無辜の娘ルーシーとの三角関係物語。フランス革命前夜、18年間バスティーユ牢獄に入れられていた医師マネットが解放され、イギリスに亡命していた娘ルーシーが父を迎えにいく所から、物語は始まります。

その時に馬車に乗り合わせた男がチャールズであり、5年後に彼がスパイ容疑で裁判にかけられた時に証言を求められて出廷したのがルーシーでした。そして、チャールズとそっくりの弁護士シドニーの存在が、彼の無罪の決め手となったのでした。2人の男性はともにルーシーに恋をしますが、シドニーが身を
引いたためにルーシーはチャールズと結ばれ、幸せな家庭を築き上げます。

そしてフランス革命が起こります。フランス貴族の家に生まれながら、父に愛想をつかして亡命していたチャールズはかつての召使いの危機を救うために渡仏するのですが、貴族階級を憎む者たちによって逮捕されてしまいます。しかも、義父となったマネット医師を投獄したのはチャールズの父親だったのです。チャールズがギロチンにかけられる寸前、今もルーシーを愛していたシドニーは、ある悲壮な決意をするのですが・・。

物語としてはよくできていますが、以前の作品であるオリバー・ツイスト『ディビッド・カパーフィールド』のような意外性に欠けている分が少々減点。著者の面白さがイマイチ出せていないように思えます。

何よりせっかくフランス革命を題材にしながら、フランス市民がヒステリックに貴族への復讐を叫ぶ者として矮小化されてしまっていることは致命的かな。もっとも、ディケンズに「歴史」を書けといっても無理なんですけどね。彼の特質は、別のところにあるのですから。

2011/10