りぼんの読書ノート

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マルチーズ犬マフとその友人マリリン・モンローの生活と意見(アンドリュー・オヘイガン)

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ハリウッド版の「吾輩は犬である」ですね。でも、この犬も飼い主も実在しています。しかも、名前もあるんです。マリリン・モンローが実際に飼っていたマルチーズ犬「マフィア」が、犬の視点から大女優の最後の数年間の生活と交友を眺めたという仕立ての作品。

スコットランドの由緒正しい血統を引いているマルチーズ犬は、有名人たちの手を経て、マリリンのもとに届けられます。ヴァージニア・ウルフの姉であるヴァネッサ・ベルの家に生まれ、趣味でブリーダーをしていたナタリー・ウッドの母親マリアを経由して、フランク・シナトラからマリリンへのプレゼントだったんです。

当時のマリリンはアーサー・ミラーと別れたばかりといいますから、1961年のこと。新作「荒馬と女」の評判は悪く、共演したクラーク・ゲイブルの急死もあって、精神を病んでいたときにマリリンを支えたのか、この通称「マフ」というマルチーズ

でも、犬と人間の間には超えられない壁がありました。ひとつにはニューヨークとハリウッドを何度も行き来していたマリリンと、常に一緒にいられたわけではなかったこと。ケネディに「Happy Birthday」を歌った伝説の誕生パーティに同席できなかったのはともかく、彼女の最期の瞬間にいられなかったのは、マフの痛恨の極みとなりました。

もうひとつは、マフが「哲学好きな犬」だったことでしょう。トロツキーを敬愛しながら、ラッシー、スヌーピー、レディ、ベルカなどの著名犬との交友を夢としていたマフは、現実の苦悩からは浮いてしまっていたようです。

それでも本書は、マフの視点から綴ることで、セックス・シンボル的なスターとなってしまったことに真剣に悩んでいた、マリリンの実像にかなり迫っているのかもしれません。

ところで、犬が猫を避けているのは、別に嫌いだからではないそうですよ。散文的な犬と、韻文的な猫とでは、会話が成り立たないのだそうです。

2011/9