りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか(篠田節子)

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篠田さんによる「SF小説」?
各作品のタイトルこそパロディっぽいけど、なかなか本格的な理系作品です。しかもどの作品にも、篠田さんらしい「作家の想像力」が現れていますから、SFファンでなくても楽しめます。これきっと、作家も楽しんでますね。

「深海のEEL」
深海のYrrではありません。この「EEL」は古代から深海に潜んでいた知的生命体ではなく、「ウナギ」です。レアメタルであるパラジウムを体内に多量に蓄積させたウナギは、どうして生まれたのでしょう。資源小国・日本の救世主となるのでしょうか? でも。回転寿司業界のほうが先に儲かりそう。^^

「豚と人骨」
大量に発見された縄文時代の人骨は、奇妙なことに若い女性ばかりでした。長い年月を卵の姿で生き延びてきた古代の寄生虫が、現代に蘇ります。^^;

「はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか」
まるでストーカーのようなロボットカーに付きまとわれる女性。これはボノボの習性を持ち、自律的な学習能力を持つロボットだったんですね。最先端技術を持つ中小企業が誘致された田舎の工業団地で起きた奇妙な事件は、この女性が将来、ロボットとの戦争でリーダーになる男性を産むから?いえいえ、これはロマンスなんです。^^

「エデン」
カナダの北極圏にある文明から隔絶された集落にほとんど拉致状態で連れ込まれ、30年間掘り続けるというトンネル工事に従事することになった青年にとっては、そこの生活こそが人生になりました。故郷とは家族なのです。

「SF小説」と言いましたが、どれも現代社会でいつ起きてもおかしくない物語。決してキワモノではありません。

2011/9