りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

変愛小説集2(岸本佐知子 編)

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「レンアイ」ではありません。「ヘンアイ」です。独特の感性を持つ翻訳家の岸本さんによる「変愛小説アンソロジー」の第2集。常人には感情移入できないこと、間違いなし! 一方で、現代の「純愛」とは「変愛」にしか存在しないのかとも思えてきます。

1.彼氏島(ステイシー・リクター)
イケメンの原住民だけが住む島に漂着して逆ハーレム状態になったギャルは述懐します。「人類学者に調査して欲しい。あたしが幸せなのかどうか・・」

2.スペシャリスト(アリソン・スミス)
身体の中にブリザードの吹き荒れる広大な空虚を持つ女の悲劇。

3.妹(ミランダ・ジュライ
存在しない友人の妹に恋してしまった初老の男のいきつく先は・・。

4.私が西部にやって来て、そこの住人になったわけ(アリソン・ベイカー)
アメリカ価値観を象徴するチアチーダーは、いまや絶滅危惧の幻の動物のような存在。その姿を一目見ることを夢見る人々が、モンタナの酒場に集います。

5.道にて(スティーヴン・ディクソン)
寒い雨の道を連れ立って歩くうちに、女が倒れてしまいます。残された男は・・。

6.ヴードゥー・ハート(スコット・スナイダー
愛する女に突如キレてしまう男は、自分の心がどうなっているのか確認したくて、ブードゥーを操るという女囚刑務所に服役中の老女に会いに行きます。

7.ミルドレッド(レナード・マイケルズ)
シュールで滑稽で不思議な会話。この会話はテレパシーでしょうか?

8.マネキン(ポール・グレノン)
愛する妻が木製のマネキンだと気づいてしまった男ですが、別れられません。

9.『人類学・その他 100の物語』より(ダン・ローズ
都会的で滑稽な、愛にまつわる言葉の辞書。女性崇拝とドライな気持ちは紙一重

10.歯好症 デンタフィリア(ジュリア・スラヴィン)
身体中から歯が生えてくるという異変を起こした女性を愛し続ける男の不幸。

11.シュワルツさんのために(ジョージ・ソーンダーズ)
「トータルリコール」のように記憶を操る世界。ぼけ老人のシュワルツ夫人の記憶をメモリーに移動させて売り物にした男は、彼女の死から立ち直れない自分の記憶も・・。

私のお勧めは、「妹」と「私が西部にやって来て、そこの住人になったわけ」かな。第1集のレビューはこちらです。 変愛小説集

2010/8