りぼんの読書ノート

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道徳という名の少年(桜庭一樹)

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野田仁美さんの手による挿絵がついた、ヴィジュアルストーリーです。小説部分は、これまでの桜庭さんの作品のエッセンスを集めた「大人びた童話」で、近親相姦という背徳によって生まれた「ジャングリン(道徳)」という名の少年を中心にした、不思議な一族の物語。

完全なネタバレですが、一族の歴史をメモしておきましょう。町で一番の美女が産んだ父親不明の4姉妹(1、2、3、悠久)と黄色い目の弟。やはり美しい娘であった悠久と、黄色い目の弟の間に生まれたのがジャングリン。

ジャングリンは戦争で両手を失い、雑貨屋の娘と結婚。手を失ったジャングリンに代わって、父親の両手が娘を愛撫する。ジャングリンの息子は、女装の歌手ジャングリーナとなって、プラスチックの恋人と残忍な心を持つようになります。ジャングリーナの息子ジャンは戦場で亡くなるのですが、ジャャングリーナはどうやって息子を持てたのでしょう?

やがて、遠い親戚のミミとクリステルがジャングリーナを看取って、物語は終わります。美しい顔(かんばせ)を持った一族が、年老いると太って醜くなるのは何かの暗喩?

2010/8