りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

民王(池井戸潤)

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「銀行小説家」から「企業小説家」へと変貌を遂げてきた池井戸さんが、政治の世界を題材とした作品に踏み込んできました。

2人続けて1年しかもたずに辞任していく総理。選挙対策のために担ぎ出された後任の総理は、答弁メモに書かれた漢字も読めずに、誤読や幼稚な発言を繰り返す。盟友の大臣は、酩酊状態で記者会見の場に現われて支離滅裂な発言をし、政権崩壊の危機・・。どこかで聞いたことがある話ですね。政治家というものが、情けない存在に思えたものです。

でも、この本を読んで納得しました。首相と大学生のどら息子の頭の中身が入れ替わってしまっていたのです。もちろん酩酊大臣も、コンパの最中だったどら息子と入れ替わっていました。これは、アメリカの最先端軍事技術を用いた陰謀だったのですね(笑)。

ありえない技術や、極端に戯画化された登場人物の描写はさておくとして、「親子の入れ替わり」というテーマは、もう使い古されていますよね。その結果、慣れないけれども異なる立場で対応したことが「結果オーライ」だったり、それぞれが相手のことを理解できて断絶が埋まったりした後に、元に戻って「めでたしめでたし」という話としては、『パパとムスメの7日間(五十嵐貴明)』もありました。「政治を熱く語る」のもいいですが、ちょっとこれでは芸がなさすぎるのでは?

ところで現実の政治はこの本のようには進まず、総選挙では与党が大敗して政権交代が起き、新政権の新首相も1年ももたずに辞任に追い込まれたのも記憶に新しい出来事です。ひょっとして鳩○元首相も、頭の中身が誰かと入れ替えられていたのでしょうか? そうとでも思わないと理解できない気もします。

2010/8