りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

すべては遠い幻(ジョディ・ピコー)

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幼いときに母親を亡くしてからずっと、愛情深い父親によって育てられたディーリアに衝撃的な事件が降りかかります。28年前に起こしたという幼児誘拐事件で、愛する父が逮捕されてしまうのです。被害者はなんと、当時4歳だったディーリア自身。父は、離婚した妻のもとから彼女を連れ出して、その後ずっと周囲にも娘にも身分を偽って生きてきたというのです。

ディーリアの心は揺れ動きます。愛する父親が犯罪者で、亡くなったと聞いていた母が生きている? 彼女自身、サラという娘を持って、母親の気持ちがわかるようになっているのですから、なおさらです。

本書は、ディーリア、父親のアンドリュー、ディーリアの婚約者で弁護士のエリック、幼馴染みのディーリアを愛しているものの親友のために身を引いた新聞記者フィッツ、そして28年間、娘に会えなかった母親エリスの5人の視点から語られていきますが、わたしのなかのあなたと同様、「親子関係」という答えの出ない問題に、「裁判」というショッキングなツールを用いて切り込んでいく作品となっています。

裁判の中で、母親が当時アルコール中毒で娘の世話をできていなかったことなどが明らかになりますが、28年という時が流れた後、今や関係者の誰もが犯人への罰を望んでいない犯罪がどう裁かれるのでしょう。最後の最後に「とんでもない事実」が飛び出したりして、ハラハラドキドキの展開。

ただ、この人の作品にいつも共通しているのですが、エピソードを詰め込みすぎなんですね。あらゆることに物語を紡ぎ出してしまう「作家の業」なのでしょうか。それとも脇役にもドラマティックな見せ場を与えなくてはならない映画やドラマの手法の影響でしょうか。もっと余分なものを削ぎ落としたほうが、いい作品になるように思えるのですが・・。

2010/4