直木賞を受賞した『まほろ駅前多田便利軒』のスピンアウト小説と言われていますが、多田・行天コンビの「その後」にも触れられていますし、今後の展開も期待されるエピソードも含まれていますので、「続編」という感じです。
本編で脇役だったメンバー(若き地元ヤクザ星良一や、生意気小学生の田村由良や、曽根田のおばあちゃんや、岡老人の細君など)が活躍しているとのことですが、本編の話を覚えていないのでそのあたり、実はよくわかりません。^^;レビューでも、話の筋にはいっさい触れていませんでしたので・・。
ともあれ本書には、脇役だった人たちの「心の揺れ」を感じさせる連作短編が7編収録されています。最後の「なごりの月」以外では、多田と行天の役割は「触媒」ですね。
おそらく続編もあるのでしょう。レストランチェーン社長である若い未亡人と多田の間にはロマンスが芽生えそうですし、行天が幼い子どもに対して示す異常なまでの感情の揺れの謎も解かれるのでしょうし、自然食を勧める団体とその信奉者は、何か事件を起こしそうな雰囲気ですので。
ひとつひとつの作品は「上手」と思えるのですが、これもまた記憶に残らなそうです。一番印象が強かったのは、「まほろ」のモデルである「町田」の全体としての雰囲気や、戦争直後の様子でしたし。
2010/3