りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

太陽の盾 - タイム・オデッセイ2(アーサー・C・クラーク、スティーヴン・バクスター)

イメージ 1

前作時の眼で、人類誕生から2037年までの200万年にわたる時代の地球を切り刻んで張り合わせ、つぎはぎの地球「ミール」を作ってみせた銀河の管理者「ファーストボーン」は、その意図も明かさないまま、前作の主人公のひとりビセサを地球に帰還させます。彼女が帰還の途上で見たものは、地球を焼き尽くす太陽の姿でした。

一方で月面にいる若き天文学者ユージーンは、地球上のあらゆる動植物を焼き尽くす太陽嵐が2042年4月に到来すると予言。人類は、宇宙空間に地球と同じサイズの巨大な盾を築いて来るべき大災害から地球を守ろうとするのですが・・。

どうやら人類を監視している「ファーストボーン」は、宇宙エネルギーを食い尽くす可能性を有する攻撃的な知的生物を「駆除」する方針のようです。では彼らはなぜ「ミール」を作り、ビセスに終末の映像を見せたのか。神々にも等しい者たちの思考は想像を絶しているのですが、その本意は続編で明らかになるのでしょうか。

とはいえ、自らが作り上げたAIの知性と能力を駆使して宇宙に巨大な構造物を建造するとの「本格ハードSF」となった本書は、「歴史系SF」の雰囲気が強かった前巻よりもはるかに読み応えがありました。山本弘さんの地球移動作戦や、野尻抱介さんの太陽の簒奪者や、ロバート・チャールズ・ウィルスン時間封鎖などの、良質なハードSF作品と共通するワクワク感があるのです。もっとも後者2冊では、巨大構造物を作るのは異星人なのですけど。

偉大な姉妹編『2001年シリーズ』の完結編3001年終末への旅では、宇宙知性体に反撃した人類の試みは成功するのですが、このシリーズではどうなるのでしょう。ヒロインのビセサは、フランク・プールになれるのでしょうか? まさか、エネルギー生命体となったデイヴィッド・ボーマンの役割ではないと思うのですが・・。

巨匠アーサー・C・クラークさんは2008年に亡くなっていますが、続編は2007年に出版されていますので、まだ共同執筆の形なのでしょう。心配は不要のはず。本書と同様、クラークさんの構想をもとにして、バクスターさんが思う存分に腕を振るってくれているでしょうから。

2010/3