ジンバブエで生まれ、ボツワナで働いたこともあるスコットランド人の法学教授による、ボツワナ唯一の女探偵マ・ラモツェを主人公にした「N0.1レディーズ探偵社」シリーズの第2作。ミステリというより、随所に現れる「アフリカ式思考」が楽しい本です。
父の死後、遺産の牛を売って探偵社を開いたマ・ラモツェに持ち込まれる事件は、いかにもアフリカ的なものが多いのですが、今回の依頼はアメリカからやって来たご婦人からのもの。アフリカに惹かれて友人たちと開拓農場を立ち上げたものの、10年前に消息を絶ってしまった息子に何が起こったのかを知りたいというのです。
当時、ボツワナ警察やアメリカ領事館が調査してわからなかった事件の真相が、今頃になってわかるのでしょうか? それがわかってしまうのが「アフリカ・スタイル」なんですけどね。マ・ラモツェは、とうの昔に放棄されて荒れ果てた農場を訪れ、風の音を聴いて確信します。「彼はまだそこにいる」と・・。
ところで、第1巻の『No.1レディーズ探偵社、本日開業』のラストで、自動車整備工場を経営するラ・マテコニと婚約したマ・ラモツェの私生活はどうなったのでしょう。小さなダイヤモンドの婚約指輪を買ってもらって、思わず涙ぐむなんて場面もありますし、ちゃんと進展している・・といいたいのですが、こちらもかなり波乱万丈な展開なんです。
ラ・マテコニに雇われていた性悪のメイドが、マ・ラモツェを陥れようとして悪巧みを仕掛けたりするのはともかくとして、心優しいラ・マテコニは孤児院の院長に説得されて、婚約者のマ・ラモツェに無断で、不幸な姉弟を養子に引き受けてしまうのですから。でも、ご安心ください。彼女はこんなふうに自問自答するのです。「この国でいちばん優しい男性と結婚したいか? ・・ したい」「子供たちの母親になれるかしら? ・・ なれる」素晴らしい!^^
秘書から探偵見習に昇格したマ・マクチが、初めての事件を解決しておきながら、真実を伝えることが皆の幸福になるかどうかを悩む場面があったり、随所に自国と欧米や近隣国との生活様式の比較があったりと、「アフリカ的な幸福」に対する著者の思いが随所に現れています。結構、骨太なのです。
2010/3