りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

抱擁(辻原登)

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映画「シックス・センス」と似た雰囲気のある小説です。

ニ・ニ六事件から1年後の東京。前田公爵邸で5歳の令嬢・緑子のお世話係りとして雇われた、18歳の「わたし」。天使のように可愛い緑子でしたが、時々様子がおかしくなるのです。通路の大時計の横や、庭園の木の洞に誰かがいるような素振りを見せたり、夜中に部屋の外にさまよい出たり・・。「わたし」は、緑子から慕われていた前任の女性が、ニ・ニ六事件の主犯格となった将校と結ばれたものの、夫が処刑された後に悲劇的な最後を迎えたことを知ります。

果たして、緑子が見ているものは何なのか。緑子は何かに取り憑かれているのか。それは、少女を守る存在なのか、害をなす存在なのか。それとも、取り憑かれているのは「わたし」のほうなのか。そして、事件が起きるのですが・・。

とまぁ、こんな小説なのですが、「深遠な歴史と濃密な虚構が融け合う至高の物語」と紹介にあるのは誇大広告です。

2010/3