りぼんの読書ノート

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愛書家の死(ジョン・ダニング)

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元殺人課の警部ながら、古本の魅力に取り憑かれて古書店主となったクリフを主人公とするシリーズ4作め。ただ、古書に関するミステリとの印象は薄れました。事件のきっかけこそ、愛書家であった夫人の蔵書が何者かに盗まれていたことで、犯人も古書に憑かれた者なのですが、本書の大半はフランシス・ディックばりの競馬ミステリなんです。

馬主であった男が死んで遺産の相続が問題となり、20年前に死んだ馬主の妻が蒐集していた蔵書の一部が盗まれていたことが判明するのですが、古書の鑑定を依頼されたクリフは、20年前に起きた馬主の妻の死に疑問を抱くのです。

過去の夫人の交友関係を探るべく、カリフォルニアの競馬界潜入したクリフの前に現われたのは、それぞれ常軌を逸した馬主の息子たちであり、夫人と不倫関係にあった調教師であり、夫人の幼馴染みでありながら身をもちくずした馬丁であって、そのあたりはおもしろいのですが、古書の世界からは遠く離れてしまいました。

カリフォルニアの競馬情景は美しく、馬主の娘で虐待された馬を引き取って癒やす活動をしているシャロンなど、魅力的な人物も登場します。ただ、古書の世界から離れてしまうと、シリーズの魅力は半減してしまうと思うのですが、どうでしょう。

過去の殺人事件にこだわって危険な仕事に入り込んでいくクリフに対して、前作で関係を持った恋人のエリンは違和感を覚えてしまいます。2人の先行きも気になるところなのですが、新作はまだ出ていないようですし、続編を読むかどうかは、微妙かなぁ。

2010/12