18世紀のフランス。天才的な嗅覚を持ちながら、自分自身の体臭を持つことのなかった孤児グルヌイユの衝撃的な人生の物語。
かぐわしい香水を生んだパリは、悪臭の街でもありました。汚泥、糞尿、腐臭、疫病、死臭すら濃厚に漂う街で、香水の存在を知ったグルヌイユをより魅了したものは、娘の身体から立ちのぼる芳香でした。
その後の彼の人生の目標は、「匂い自体が純粋無垢な美」ともいうべき娘の匂いを調合することに捧げられます。
その後の彼の人生の目標は、「匂い自体が純粋無垢な美」ともいうべき娘の匂いを調合することに捧げられます。
香水調合師の親方のもとで蒸留法、解離法、冷浸法といった、匂いを分離・定着させる手法を知ったグルヌイユは、最後の目標に取り掛かるのですが、それは大量の処女殺人事件に繋がっていくものでした。・・。
匂いに憑かれた男の話はおぞましいけれども、その一方で、何か神々しさすら感じさせてくれる。処刑場に集った人々も、裁判所長官も、被害者の父親ですら惑わせてしまう至高の香りを作り上げたグルヌイユに残されていたのは、香りの祭壇に生贄として自分自身を捧げることだけだったようですが・・。
息苦しくなるほどに、濃密な香水を嗅いだような読後感を与えてくれる本でした。その一方で、ある匂いが突然として忘れていた記憶を呼び覚ますような嗅覚の不思議さについて、思いを馳せさせてもいただきました。
2010/12再読