りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

パイレーツ(マイケル・クライトン)

イメージ 1

2008年に急逝された巨匠のパソコンから発見された作品です。『ジュラシック・パーク』や『タイムライン』など、「科学技術小説作家」の印象が強い著者ですが、本書は17世紀のカリブの海賊を主人公に据えた、海洋冒険小説。もちろん操船や砲撃などの技術的な描写は的確ですし、歴史的背景や時代考証もしっかりしていて、その上で思いっきりアクションを取り入れた構成。すでに映画化も決定しているとのこと。

時代は1665年。周囲をスペインの植民地に囲まれているイギリス領ジャマイカ。ここの総督は、新大陸から本国へと財宝を運ぶスペイン船を襲撃して、財宝を奪う海賊行為を推奨しているんですね。というより、それが主要な役割なのですが、おおっぴらにはできないことですので、常に大義名分を必要としています。

スペイン領の要塞島マタンセロスに停泊している財宝船の存在を知った総督は、私略船船長のハンターに話を持ちかけます。ハンターは、冷酷な殺し屋、天才航海士、驚異的な視力を持つ男装の麗人ナビゲーター、火薬の専門家、怪力の巨漢など、個性豊かなメンバーとともに出港するのですが、行く手には思わぬ難関が次々と待ち受けていました・・。

スペイン艦の襲撃や守備隊との戦闘だけでなく、ハリケーンや人喰い人種や巨大海洋生物の襲撃など次次と難関が降りかかり、さらには総督代行の裏切りや不倫、令嬢の救出など思いっきりアクションを散りばめたジェットコースター・ストーリーなのですが、読み終えた感想は「えっ、これだけ?」。

当時は三流大学であったハーバード出身の海賊とか、出ダ・ヴィンチの理論に基づく砲撃とか、プラチナは無価値で銀の不純物扱いだったとか、トリヴィア的知識を別とすると、目新しいできごとや、想像を超える展開などがなかったように思えてしまったのです。ひょっとしたらこれを下敷きにして、もっと手を入れるつもりだったのかもしれませんが・・。

2010/2