りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

エンディミオン(ダン・シモンズ)

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人類とAI は袂を別つこととなり、AI に依存していた恒星間の転移・通信システムは崩壊。連邦の「大崩壊」から300年後。独立色を強めていた各惑星は、復活したカトリック教会による神権政治のもとに統治されていました。300年もの間、あの「元巡礼」のホイト神父が教皇で居続けており、教会は支配の道具として、あの「聖十字架」を復活の秘儀として用いていたのです。

惑星ハイペリオンの狩猟ガイドのエンディミオンは、冤罪で処刑される寸前に謎の老人から命を救われて不思議な依頼をされます。その老人は冷凍睡眠で生き延びてきた「元巡礼」の詩人サイリーナスであり、まもなく「時間の墓標」から現れる少女を救って欲しいというのです。彼女こそが救世主なのだからと。

その少女とは、やはり「巡礼者」であったレイミアと、AI によって再現された詩人キーツの間に生まれたアイネイアー。彼女をAI連合コアの手先である大悪魔と信じて追う教会軍からの逃走劇が開始されます。各惑星を経巡って逃走するアイネイアーらが見たものは、多種多様な生命の姿であり、教会によって「抹殺」されたとおぼしき「邪宗」の星々でした。やがて、教会の真の姿が明らかになり・・。

教会の支配する宇宙の暗黒時代はアシモフの『銀河帝国興亡史』を髣髴とさせますし、今度はアイネイアーを守る側に立つ「苦痛と死の権化シュライク」と、教皇に派遣された新型の女性形ロボット・ネメスとの戦いはターミネーター3を見るかのよう。シュライクの「時間と空間を超越する力」は、日本人にはおなじみのサイボーグ009に使われている「加速装置」でした。

移動の度に乗員が死を迎えて復活を余儀なくされるという、教会の「大天使級急使船」に乗り込んで一行を追う、幾度もの死をものともしない一方で心優しいデ・ソヤ神父大佐は、なかなかいいキャラです。

本書は、アイネイアーらが「オールド・アース」に到着するところで終わりますが、これはまだ人類の神々と、AI の神々との新たな闘争の序章にすぎないようです。大冒険を終えたはずのエンディミオンが、なぜ「シュレジンガーのキャット・ボックス」に捉われているのかも謎ですし・・。続編『エンディミオンの覚醒』も読まないわけにはいきません。

2009/11