りぼんの読書ノート

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無限記憶(ロバート・チャールズ・ウィルスン)

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前作[『時間封鎖は、「仮定体」と名づけられた謎の物質に覆われた地球が外宇宙から孤立している間、地球時間で40年のうちに宇宙では40億年も経過したため、太陽の死期も迫っているという、とんでもない展開の物語でしたが、本書はその続編です。

「仮定体」によって突然作られた「アーチ」によって、テラフォームされた外宇宙の惑星イクウェイトリアへの移民が可能となって30年。本書では、「仮定体」の謎に迫ろうとする試みがなされます。

鍵となるのは、「仮定体」と交流できる可能性を持った12歳の少年アイザック。彼は、胎児のうちに火星から持ち込まれた「第四期処理」をされているのです。「第四期処理」とは、「仮定体」の成分を用いて人命を延長させる処理のことですが、子どもには致死性であるため、胎児への処理などはもちろん違法。そもそも、地球系の人類世界では「第四期処理」は重大な違法行為とされています。

失踪した父親を探して、「第四期処理者」たちが隠れ住むコロニーへと向かおうとするリサと、その恋人のターク。さらに、かつて火星でひとり誕生したものの早世した別の第四期処理された少年とともに育った老女スリーンや、前作の主人公タイラーの妻・ダイアンらが、砂漠の果てのコロニーへと向かいますが、その時地表には大量の灰(仮定体の亡骸?)が降り注ぎ、大地は鳴動をはじめます。いったい彼らが見ることになったものとは・・?

まだまだ「仮定体」の謎は解けていません。宇宙的規模での巨大ネットワークであり、記憶の堆積であることは確実なようですが、「仮定体」のなかで個人レベルの記憶までもが保持しえて、さらに何らかの意思作用を持っているとなると、訳がわからなくなってきます。さらに「仮定体」が「すべての文明の廃墟に関心を持っている」とはどういう意味か?

ひょっとしたら「宇宙の死」を見据えて「宇宙の再生」を試みる存在なのかも? しかし、知性など持たないネットワークかもしれませんし、仮に知性があるとしても人類などにはおよびもつかない目的をもったものであろうこともありえます。三部作の最終巻が待たれます。

2009/11