りぼんの読書ノート

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ハイペリオンの没落(ダン・シモンズ)

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前作ハイペリオンの続編というより、後半にあたります。辺境の惑星ハイペリオンの「時間の墓標」へと向かった7人の巡礼はどうなるのか? 蛮族アウスターの総攻撃を迎え撃つ人類連邦の運命は? 人類から独立を果たしているAI群「テクノコア」の目的は? そもそも、「時間の墓標」とその守護にあたる怪物「シュライク」とは何なのか? 前作で積み残しとなっていた問題が、この作品で一気に解決へと向かいます。

本書での主な語り手は、詩人ジョン・キーツのサイバークローン。前作で「人間になりたがったAI」として抹殺されたキーツのクローンが再び再生されるのですが、最終的には「コア」によって再生された「オールド・アース」にある19世紀ローマで病死。

でもキーツの死には大きな意味があったのです。「人類連邦」対「アウスター」の全面戦争は人類の未来にとっては本質的ではなく、「AI」との関係にこそ人類の未来がかかっていたのですが、それは最終的には「人類の神」対「AIの神」の戦いという様相を呈してくるのです。

人類に「苦痛と死」を与える怪物シュライクは未来のAIの手によるものでしたが、「人類の神」を呼び出すものは「恐怖」ではなく「共感」であり、それは詩人によってもたらされるものだったというのが本書の核心部分。

いきなり結論めいたことを書いても、何のことだかわかりませんよね。ここでは巡礼たちの「その後」についてメモを残しておきましょう。完全にネタバレが含まれていますが、この本を読む人なんていないでしょうから。

ヘット・マスティー
聖樹教会から派遣され、エネルギー喰いの小鬼のエルグを使って「苦痛の樹」を操ろうとしたのですが、シュライクによって落命させられます。

領事
人類連合とアウスターの双方を裏切った過去を持つ領事は、今回の危機に際して両者の仲立ちを依頼されます。かつての二重スパイは平和の使者となれたのでしょうか。

ホイト神父とデュレ神父
少数派となったキリスト教神父。聖十字架によって永遠の再生という呪縛にかけられた両神父でしたが、シュライクによって殺害されたホイト神父の亡骸から再生したのは、先に亡くなっていたデュレ神父でした、彼は後に新教皇に選出されます。

カッサード大佐
時間の墓標から未来へと飛んだカッサードは、「人類vsシュライクの最終戦争」でシュライクを打ち倒すものの、彼も絶命します。彼の「過去」に姿を現わし、時を遡行する運命の女性モニータとは、この戦場ではじめて出会ったのです。しかも、モニータがレイチェルだったとは!

ソル・ワイントラウブ
時間遡行症にかかって赤ん坊となり、消滅を目前とした娘レイチェルをシュライクに差し出しますが、レイチェルはキーツのサイブリッドによって救われます。ソルは再び成長をはじめるレイチェルとともに、未来へと転移していきます。

マーティン・サイリーナス
自らの詩想がシュライクを生み出したと信じる老詩人は、シュライクによって速贄の樹に串刺しにされ、永遠の苦痛を味わう中で、詩想を回復します。彼を救出したのはレイミアでした。

ブローン・レイミア
ジョン・キーツのサイブリッドと愛し合い、彼の子を宿します。彼とともに「コア」の深層部に至り、「コア」の目的や内部の争いを目の当たりにするのですが、彼女子こそ「後に来たる者」の母親となる運命をもっていたのです。

過去のSF名作の真髄を利用して、キーツの未完の詩作をテーマに再構成された物語は楽しかったのですが、それにしても長い!長すぎます。さらにこれが、『エンディミオン』と『エンディミオンの覚醒』に続くのですから。

2009/11