りぼんの読書ノート

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身もフタもない日本文学史(清水義範)

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レトロさんが紹介してくれた本です。パスティーシュの名手・清水義範さんが、古典から現代に至る日本文学史をズバッと斬ってくれます。現代は駆け足になってしまって焦点がボケたけど、古典の部分には、思わず納得させられてしまいました。なかでも最高だったのは、次の箇所。頷く方も多いのではないでしょうか。
日本人がエッセイを書く時、女は清少納言に、男は兼好になる。「枕草子」のように自らのセンスを誇り、「徒然草」のように世の中を叱って己を自慢するのだ。伝統の力の、何と偉大なことよ!
ほかにも「『源氏物語』での男女の短歌のやり取りはメールである」とか、庶民の馬鹿騒ぎぶりを直接的に描いた「『浮世風呂』はケータイ小説だ」とか、言われてみれば納得できる、意外な指摘が満載です。

漱石の小説が現代人にもスラスラ読めてしまう理由」は、わかりました。日本語が亡びるとき(水村美苗)にあった「日本語の成立過程」と同じですね。外国の小説に触れて「言語」と「国語」の違いに気付いた明治期の先達たちが、「現地語」にすぎなかった日本語を「国語」として成立させてくれたおかげです。漱石の小説こそが、はじめて「国語」で書かれた小説だったわけです。

「世界文学全集にどの日本人作家を入れるか」との設問は悩ましい。清水さんの選考では、紫式部と、夏目漱石は絶対に外せない。さらに井原西鶴と、谷崎潤一郎と、大江健三郎と、もう一人「あなたの好きな作家」ということですが、どうでしょうか。

2009/11