りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ソーネチカ(リュドミラ・ウリツカヤ)

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古き良き「18世紀ロシア文学」の香り漂う作品です。ドストエフスキートルストイではなく、ツルゲーネフチェーホフの流れ。

「普通の女性」の「普通でない一生」が淡々と描かれます。幼い頃から本の虫だったソーネチカは、1930年代にフランスから帰国した年の離れた画家のロベルトに見初められて結婚。ロベルトは反体制的芸術家とみなされていたため、2人は当局の監視のもとでソヴィエト国内を転々とし、貧しい生活を強いられますが、一人娘ターニャを授かり家族は幸福でした。

ところが夜間学校に入ったターニャが、友人となった孤児の美少女ヤーシャを家に連れてくると、家族の間に波紋が広がります。ヤーシャの境遇に同情して、我が子のように彼女をいとおしんだソーネチカでしたが、ロベルトは・・。

運命をあるがままに受け入れるソーネチカは、弱い女性ではありません。不幸は、痕跡を残さずに、彼女の中をただ通り過ぎていくかのようです。まるで、彼女がロシアの大地の一部であるかのように。・・などと言い切ってしまうと、ちょっとズレた感想でしょうか。彼女はユダヤ系なのですから。でも「宗教的」という表現はそぐわない気もしますし、「読書の力」などというと、もっとズレていく。彼女のような強さを表現する言葉を、私は持ち合わせていないようです。ソーネチカの人生に寄り添うような作者の視点が印象に残る作品でした。

2009/11