りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2009/10 倒壊する巨塔(ローレンス・ライト)

ふと思い立って、村上春樹さんの長編をはじめから読み返してみました。約2ヶ月間で全部再読してしまったのですが、「もっとゆっくり読めば良かった」と後悔しています。村上さんの本を読んでしまうと、並みのフィクションには満足できなくなりますね。だからというわけでもないのですが、今月の上位はノンフィクションです。
1.倒壊する巨塔(ローレンス・ライト)
副題に『アルカイダと「9・11」への道』とあるように、「アルカイダ」の背景と軌跡を丹念に追いかけて、彼らの実像を伝えるノンフィクション作品です。狂信的カリスマ性を有するウサマと、エジプトの急進組織を擁するザワヒリ、さらにはテロを正当化しうるファトワ(教義判断)を出し続けた宗教者らを「異化」することなく、膨大な資料と証言を通じて、理解可能なものとした著者の姿勢が素晴らしいのです。

2.ハチはなぜ大量死したのか(ローワン・ジェイコブセン)
2006年以降、北半球に棲息するセイヨウミツバチの1/4が消滅しています。「蜂群崩壊症候群(CCD)」と名づけられたこの現象を解明すべく挑んだ著者が見出したのは、農業経済に組み入れられた結果、あまりにも自然界でのあり方とかけ離れた養蜂業の実体でした。優れた受粉生物に起きた問題は、生態系全体に関わりかねない大問題なのですが、それよりも、自然な個体数調節機会を失って大崩壊に至ったミツバチの運命が、現代の人類と重なって見えてくるのです。

3.ケンブリッジ・クインテット(ジョン・L.キャスティ)
1949年のある晩、政府の科学顧問を務めている物理学者スノウの呼びかけに応じ、数学者チューリング、哲学者ヴィトゲンシュタイン、物理学者シュレーディンガーと遺伝学者ホールディンという「知の巨匠」たちがケンブリッジに集まり、「人工知能」について議論を戦わせます。「ありえたかもしれない会話」によって、最先端の課題の底流にある問題を浮かび上がらせてくれる「サイエンス・フィクション」。^^



2009/11/1