2009年を振り返っての「ベスト本」を選んでみました。
長編小説部門(海外)
ミレニアム三部作(スティーグ・ラーソン)
今年のベストはリチャード・パワーズの『われらが歌う時』にするつもりでしたが、最後の最後の瞬間に気分を変えました。自書が世界的ベストセラーになったことを知ることもなく、出版直前に急死した著者に、哀悼の意を表すつもりで・・。スウェーデンを代表する児童文学の主人公といったら『カツレ』と『ピッピ』ですね。彼らが大人になったような主人公たちを配して、「女を憎む男たち」の醜い犯罪を暴く三部作はそれぞれ、ミステリ、アクション、国際謀略という異なるジャンルの上質なエンターテインメントに仕上がりました。テーマも、構想も、著者の姿勢も素晴らしい。
長編小説部門(日本)
太陽を曳く馬(高村薫)
こちらも『1Q84(村上春樹)』のつもりだったのを、最後の瞬間に変更しました。海外のベストをエンタメ系にしたので、ずっしりと重い作品を選びたくなったのです。村上さんの作品は、2010年に続編が出るという噂もありますし・・。高村薫さんの4年ぶりの単行本は、『晴子情歌』、『新リア王』に続く、福澤一族3部作の完結編であると同時に、『マークスの山』、『照柿』、『レディ・ジョーカー』の合田雄一郎を登場させるという、まさに高村文学の総決算といえる作品でした。21世紀日本における「近代理性精神の崩壊状況」を認識論や宗教論を駆使して、まざまざと抉り出してくれた重厚な作品です。
短編小説部門 該当なしカズオ・イシグロさんの『夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』と、佐藤亜紀さんの『激しく、速やかな死』とのどちらにするのか悩んだのですが、どちらも少々インパクトに欠ける気がしましたので、2009年は「該当なし」です。
ノンフィクション部門
倒壊する巨塔-アルカイダと「9・11」への道(ローレンス・ライト)
対抗は、ローワン・ジェイコブセンの『ハチはなぜ大量死したのか』と、塩野七生さんの『ローマ亡き後の地中海世界』でしたが、アルカイダを「理解可能な実像」として把握すべく、史実やインタビューを丹念に積み重ねた本書が、全ジャンルを通じても2009年のベスト1だったように思えます。今年も素晴らしい本とたくさん出合えました。
2010年もいい1年にしたいものです。
家庭も、仕事も、読書もね。それと健康も。
2010年もいい1年にしたいものです。
家庭も、仕事も、読書もね。それと健康も。