りぼんの読書ノート

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甘苦上海(かんくうしゃんはい)1~3 高樹のぶ子

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日経新聞に連載されていた小説です。新聞小説はまだるっこしくて読まないのですが、それでも時々は目に入ります。「女性版失楽園」のような印象を持っていたのですが、やっぱりそうでした。51歳の日本人女性企業家が、上海で不思議な恋愛をする物語。

主人公の早見紅子は、上海でエステ・チェーンを経営している独身女性ですが、彼女のもとに突然現れた39歳の日本人男性が「本を買うお金を出して欲しい」と依頼するところから物語は動き始めます。その金額は数百万円。こんな女性にとって年下の男性にお金を出すことは「男を買う」ことなのでしょうか?

その男がまた「不思議ちゃん」なんです。日本で新聞記者をしていたときに、自分のスクープ記事がもとで町工場の経営者を一家心中に追い込んだばかりか、そこの奥さんと不倫をしていたという過去がある。そんな男がどうしていい年をして上海で大学に通っているのか・・謎めいています。何でも引き寄せる、魔都・上海にはそんな男だっていそうですけど。

そうかと思うと、二番目の男性となる、中国人女性と擬似恋愛中の不倫商社マンは、いかにも類型的。カラオケ店で働く27歳・子持ちの地方出身女性を自己申告通り「19歳少女」と信じ、援交を純愛と勘違い中。それこそゴロゴロいそう(笑)。

道具立ては揃っているのです。上海の経済的熱気。日本的感傷など何の価値も意味もないドライな風土。浦東地区の超高層ビル街と、租界時代の面影を残す上海バンド。中国人エリート女性と、地方から出てきて売春する女性。チベット仏教曼荼羅絵。その背後にあるチベット独立問題。春節の花火。400年ぶりの皆既日食・・。

でも、日本人同士で「不倫ごっこ」してる分には、ほんの上っ面を撫でてるだけ。上海の熱気も、矛盾も、混沌も、伝わってきません。日経読者のおじさま方はこの程度の小説で満足なのかしら? まぁ、『失楽園』や『愛の流刑地』をベストセラーに仕上げた階層ですからね。

4分冊なのに3巻までで感想を書いたのは、第4巻が当分回って来そうにないから。最終巻で読者を驚かせる展開を見せて欲しいものですが・・。

2010/1