りぼんの読書ノート

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テロルの季節(佐伯泰英)

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独裁者フランコの死を目前にした1973年に、スペイン親善訪問中の皇太子夫妻を巻き込んだテロに失敗して死んだはずの殺人鬼「梟」こと小磯が生きていた?

前作ユダの季節から15年後の1988年。欧州統合を控えたヨーロッパ各地で起きている残酷なテロ事件の影に小磯がいると確信した闘牛写真家・端上は、かつて彼に妻子を殺害された恨みを果たすべく、再びスペイン警察に協力を申し出ます。

でも今回の「梟こと小磯」は「手先」にしか過ぎません。15年前に小磯のテロリストとしての価値を見出して救出し、訓練をほどこした者が黒幕にいるのです。黒幕の直接目的は「欧州統合を白紙に戻させる」ことなのですが、その背景には何があって、どのような手段に出ようとしているのか。

テロを阻止して欧州統合を推進する側にスペインやハプスブルグ傍系の貴族たちがいるのは、いかにもヨーロッパぽいのですが、そんなサークルに日本人の端上なんか入り込む余地はないでしょう、普通。

ジャッカルの日」の亜流のような物語に、むりやり日本人をかませた本でした。欧州各国で戦前に製造されたクラシックカーへの解釈が延々と続くのですが、それに喜ぶのは、一部のファンだけですよね。クラシックカーを登場させたのは、かつてのヨーロッパ各国が有していたパワーを想起させるつもりなのでしょうが、かえって「欧州の没落」をイメージしてしまったなぁ。^^;

2009/10