言葉は通じない。切符の買い方もわからない。時刻表もない。時間通りに進まない。国境を越えられない。食事にもトイレにも困る旅。賄賂の要求。謎めいたビザ。あげくの果ては爆弾テロで列車が停止。トーマス・クックなど役に立たない世界が広がっているのです。
通過した国は、ロシア、中国、カザフスタン、ウズベキスタン、アゼルバイジャン、グルジア、アルメニア、トルコ、ブルガリア、セルビア、クロアチア、スロベニア、イタリア、フランス、スペイン、ポルトガル。なんといっても中央アジアからコーカサスが難所です。それに比べればロシアの不便さ、中国の混雑、欧州のストライキなどは可愛いもの。(自分でやろうとは決して思いませんが・・)
56歳の旅行作家である著者は、トルコとアルメニアの国交樹立のニュースを聞いて、この旅を思い立ったそうです。残念ながら両国の線路はまだ繋がってはおらず、一旦アルメニアから帰国して、トルコから再開することになったそうです。
鉄道需要の世界的衰退が、鉄道旅行をいっそう不便にしているようです。遠距離なら飛行機、近距離ならバスのほうが便利なようです。東欧の長距離列車に乗り合わせたのは、数人のバックパッカーだけであったというエピソードには、読者も思わず苦笑。
国境近辺にはグラデーションというものがあり、近づくに連れて隣国の雰囲気が濃くなり、遠ざかるに連れて薄くなっていくようです。それを味わうことこそが国際列車旅行の醍醐味なのでしょう。しかし、ロシアと中国、中国とカザフスタンという2つの国境には全くグラデーションがなかったと、著者は指摘しています。もちろん未経験ゾーンですが、頷けますね。
2014/4