りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

喋々喃々(小川糸)

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直前に読んだ桐野夏生さんのInと較べたら、なんて綺麗な不倫小説なのでしょう。東京・谷中でアンティークきもの店「ひめまつ屋」を営む栞(しおり)が、父とそっくりの声をした男性客・春一郎と出逢って別れるまでの1年間の物語。でも、別れてないのかも。^^;

東京・下町の季節の移ろいが、四季折々の情緒あふれる行事やおいしそうな旬の食べ物とともに描かれていて、現実の老舗のお店なども数多く登場するのですが、どうしてだろう。リアルさを感じないんですね。

主人公の栞という女性が、いかにも「男に都合のいい愛人」としか思えないんです。離婚した両親。雑駁な母と同居している2人の妹。田舎でナチュラルな暮らしをしている父親と、その同居相手。自分が許せなかったばかりに別れたかつての恋人のその後・・。栞に実在性を持たせようとしてなのか、彼女の背景も描かれてはいるのですが、どれもとってつけたようなエピソードばかりで、春一郎との不倫世界とは交差してこない。

春一郎から見ると、ただ単に一人暮らしを寂しがっているだけで、背景も実生活も持たず、もちろん、男の現実世界に入り込んでくる心配もない女性。そうそう、お店はそれほど儲かっていないようなのに、経済的にも問題なさそうなんです。私が一番気になったのは、「そんなに外食ばかりしていいのか」という点でした。^^;

2009/9